引き出しの中

シンクの右手前に木製の引き出し収納庫が置いてある。左右両側と引き出しの前面に直径2センチメートルくらいの穴がいくつかくり抜かれている。根菜などを保存するための引き出しで、風通しを良くしてあるのだろう。

一段目の引き出しには計量カップやオレンジやレモンの汁を絞る容器などがパラパラと入っている。

二段目の引き出しには引き出しの幅と同じ大きさにたたまれたレジ袋がきっちり並べられている。

レジ袋は今はどこも有料だ。某スーパーで小さいものは3円、大きいものは5円ですがどちらにしますか?と問われた。

レジ袋は3円ないし5円で買えるが、引き出しの中で眠っているレジ袋を売ることはできない。

三段目の引き出しには輪ゴムと、ポリ袋をくくるのにつかわれる針金入りのビニールひもが数十っこ、使用済みのものを再利用するつもりだったらしく折れたり曲がったりしている。輪ゴムも劣化し変色して伸びているものや溶けているものもある。引き出しの奥には未使用の輪ゴムが何百と詰まった箱も入っている。

主婦業を始めて一度も輪ゴムを買わずに済ませていたが、二十年くらい経った時に一度だけ箱で買ったことがある。二十年間買わずに済んだのに、箱はあっという間に空になった。これはいったいどういうことだろう?よくわからない。

この台所では箱は開封されているが、再利用のストックが待機しており減ってはいないようだ。これはいったいどういうことなのか、よくわからない。

 

四段目の引き出しには景品でもらうような布巾、紙製のようなのもあれば見知らぬキャラクターが描かれた布製もある。それと、アクリルの毛糸を長編みして作ったたわしがいくつか。同じ毛糸なので自作なのかバザーでまとめて買ったのかどなたからいただいたのか。

雑巾のようになった布巾をいつまでも使わずに新しいのがいくらでもあるのに、と思う。戦後を体験した方は捨てられないらしい。

 

五段目の引き出しは空。見事に何も入っていない。手前の床に置かれたものを除けないと引き出しを引くことはできない。