黄昏のインターネット

黄昏てはいない。

父が亡くなったので相続手続きをしている。

死に目には会えなかった。

二日前に見舞いに行って、医師からいつでも覚悟を、と言われたけれど、看護師は目ん玉を丸くして、今日は特別だったがコロナ渦なので面会はできないのだと言い放つくらいだから、それほど差し迫っていないだろうと何となく思った。

臨終を目前にした家族に、まさかそんなことを言わないだろうと。

あまかった。

家に戻った2日後の夕方、別の看護師から知らせが届いた。

死に目には会えなかった。

最終便で駆けつて日付が変わる頃にたどり着いた。

近くに住む親戚や妹たちが集まっていて、ひとしきり悲しみを分かち合ったのだろう、わたしが到着した時には気も済んだのか、笑みをうかべて温かく出迎えた。

わたしはマスクで顔が隠れるのを幸い、飛行機の中でシクシク泣いたので、プールで溺れたように胸が苦しくなっていた。

葬儀のあとで担当者がくれた葬儀の後にやることリストに着手した。

わたしは喪主で相続人代表だから、悲しんでいる暇がない、というのが常識なのだ。

滞在期間が限られているので、死亡届を出しに行った際に、大半の役所の手続きを済ませた。

どれと選ばず、並行して手続きを進めた。

手際がよすぎて呆れるくらいだ。

死に目には会えなかった。

話したいことはたくさんあったし、悔やんでもいる。

けれどももう会えないし話せない。

そそくさと悲しみたくない。

面倒なことはさっさと片付けてから、じっくりお別れをしたい。